「すみません、スマホが急におかしくて…」
それは、予約の合間をぬって訪れた、ひとりのお客様のひとことから始まりました。
手には、再起動を繰り返すスマホ。「朝からずっとこの状態で……大切な連絡が取れなくて」と、不安がにじんだ表情。
私の頭に浮かんだのは、「ブートループ」という専門的な不具合でした。最初は「5分10分の簡単な設定直し」かと思っていたのです。でも、それは甘い見立てでした。
営業KPIか、目の前の一人か──揺れた心
この日、私には複数の予約対応と、KPIのノルマが控えていました。時間をかけすぎれば、数字に響くことは明らか。でも──
目の前の方は、今にも泣きそうなほどに困っている。
「次の予約対応まであと15分。ここで切り上げれば、自分の評価は守れる」
「でも、もし自分がこの人の立場だったら──?」
心の中で、何度も葛藤を繰り返しました。
そして私は、静かに腹を括りました。「この人に、ちゃんと向き合おう」と。
「問診」から始まる、本気の相談対応
私は椅子を引いて、お客様と同じ目線に座りました。
「どのアプリを使ったあとに再起動しましたか?」「充電中に熱くなっていましたか?」
まるで医療の「問診」のように、状況を一つひとつ丁寧に聞き取りました。
セーフモード──“応急処置”で心を繋ぐ
「セーフモードで起動してみましょうか」と伝え、操作に移りました。
セーフモードとは、最低限の機能だけでスマホを立ち上げる方法。
たとえるなら、エンジンが止まりかけた車を、補助バッテリーで最低限動かすような応急処置です。
これにより、スマホはなんとか操作できる状態に戻りました。
「削除しますか?」と、決して決めつけない
ログを確認すると、原因はあるウィジェットアプリでした。
でも私は、「これはもう削除しましょう」とは言いませんでした。
「このアプリ、よくお使いでしたか?」
「もしあまり使っていないようなら、削除すれば再発を防げます。ただ、どうされたいですか?」
あくまで、お客様に選んでもらう。専門家の助言はしても、最終判断はその人に委ねる──それが、私の接客の信条です。
成功体験ごと、手渡したい
削除に同意をいただいた後、私は手順を丁寧に紙に書き写しました。
「同じことがあっても、ご自身で直せますからね」
そして、最後の操作だけは、お客様ご自身にお願いしました。
すると、再起動後のスマホ画面に、無事ホーム画面が現れたのです。
お客様はハッと息を飲み、その目に、涙が浮かんでいました。
「……自分でできた……!」
その小さな成功体験が、どれほど大きな安心感をもたらしたか。
そして私の名を呼びながらの「本当にありがとう」。
その言葉は、どんな営業成績よりも、深く、強く、心に残りました。
あの日、私は福祉職だった
お客様が帰られたあと、私は思いました。
「これはもう、ただのスマホ相談じゃなかった」と。
安心を届け、再び自分の力で歩けるよう支える──
それは、かつて精神保健福祉士としてやってきた「支援」と、何も変わらなかったのです。
ここは、「困った」に本気で向き合う場所です
この接客は、成約には繋がりませんでした。数字はゼロ。でも、信頼は確かに、そこに生まれました。
私は改めて胸を張って言えます。
このサイトは、誰かの「困った」に、本気で向き合う場所です。
情報だけじゃない。比較だけでもない。
心に寄り添い、迷いの中にある人に、静かに手を差し出す場所。それが「マルオと作る、私の通信費カルテ」です。
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